治験(臨床試験)では、新しい予防法や治療法の有効性や安全性を臨床研究者が検討します。この新薬やワクチンの開発に不可欠な治験に先立ち、数年、ときには数十年にもわたる研究が行われています。治験にご協力いただくことで、計り知れない価値を世界にもたらすと同時に、科学・医学の進歩や、新しい治療法、健康なコミュニティの実現に大きな貢献が生み出されています。
サノフィの研究開発チームは、患者コミュニティと直接連携して、患者さんにとっての優先課題や、ニーズ、問題などを深く理解できるよう活動を進めています。私たちは創薬の初期段階から治験、さらには治験後の期間に至るまで患者さんの声に耳を傾け、患者さんの思いを私たちの活動に反映させます。それによって、臨床研究者が患者さんにとって真に意義のあるアウトカムをもたらし、アンメットニーズの解消に取り組み、健康関連QOLの向上につながる新たなヘルスケアソリューションの創出に努めています。
治験(臨床試験)とは?
新しい医薬品は、広く用いられるようになる前の段階で、効果と忍容性を確認する必要があります。試験薬の治験(ヒトを対象とする試験)の結果は、規制当局による審査に不可欠な情報です。治験の対象となるのは、ワクチン、医薬品、複数の医薬品の組みあわせである場合もあれば、既に市販されている医薬品の新たな使い方を検討する場合もあります。
治験は以下のいずれかを明らかにするようにデザインされます。
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新しい医薬品やワクチンの効果や安全性を確認します
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治療薬候補の効果が最も高い患者集団を特定します
治験では、治験対象の製品を、プラセボ(薬理効果をもたない偽薬)または現在使われている薬剤と比較して、安全性と有効性を検討します。 また、治験を通して以下も明らかにされます。
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効果が得られる用量と投与方法
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毒性の有無、有害事象が現れる場合は、その内容と頻度
治験の実施時期は?
治験に入る前に、治験薬について非臨床試験を行います。結果が、規制当局が求める水準を満たすかそれを上回る場合だけ、治験の段階に進むことができます 。
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非臨床試験では、検討対象とする化合物や化合物の組み合わせを、さまざまな方法で検討します。科学者らは、in vitro試験や動物実験を行い、試験物質の忍容性(安全性に問題がないか)や治療・予防効果を評価します。これらの非臨床試験で得られたデータが条件を満たす場合は、健常な被験者や患者さんを対象とする試験を計画します。
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治験を実施する企業は、独立倫理委員会(IEC)や治験審査委員会(IRB)と呼ばれる審査機関に試験計画の審査を求めます。IEC/IRBは独立した機関で、試験の手順や計画書について詳細な審査を行います。審査機関は、被験者の安全を確保する手順や、新たな治療薬・予防薬の必要性について検討し、試験実施の可否を決定します。サノフィの医学研究と研究開発に関する詳細は、医療倫理と生命倫理のファクトシートをご参照ください。
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治験は、独立倫理委員会(IEC)や治験審査委員会(IRB)の許可が得られた場合のみ実施することができます。試験の実施中は、治験を許可した委員会が追跡を行い、治験参加者の安全と福祉が確保されていることを確認します。
治験参加者にどのようなリスクがありますか?
治験は、患者さんの安全確保のための予防措置が可能な限り講じられ、治験薬の治療上の有益性が期待できる場合のみ実施できます。全ての治験は、「医薬品の臨床試験の実施の基準」(GCP)に基づき、独立倫理委員会(IEC)や治験審査委員会(IRB)の監督の下に行われます。
情報提供
治験を実施する医師は、試験に参加する全ての患者さんに対して、発生する可能性のある有害事象についての情報を提供します。
検討
患者さんは、治験に参加するかどうか考え、判断する十分な時間が保証されます。参加を決めた場合、患者さんはリスクについて説明を受けた後、試験中の手順やリスク、制約を把握していることの確認が行われます。
参加
治験に参加する患者さんは、試験期間中に継続して臨床検査や医学的検査、臨床評価を受け、最大限の安全確保措置がとられます。試験参加後も、患者さんはいつでも試験への参加を撤回することができます。
治験に関する情報
患者さんは、主治医を通じて、参加できる可能性のある治験の紹介を受けます。治療選択肢が乏しい疾患などで、新しい治療法が有益な可能性があるという理由で、治験への参加を決定する患者さんもおられます。また、コミュニティを支援したい、治療法の研究に貢献したいという方もおられます。
サノフィは、どなたでも自由に閲覧できる試験登録サイトに自社の治験情報を公開しております。
サノフィの治験は、疾患ではなく患者さんを主軸とし、”患者さん”を治療する目的で設計しています。私たちサノフィのチームは、治験計画にあたって、交通機関や医療施設へのアクセスなども含めた患者さんを取り巻く環境をすべて考慮します。例えば、患者さんが遠隔地からしか治験に参加できない場合は、電子署名や経口薬の直送、遠隔医療ツールなどを活用して患者さんと医師がリモート環境で治験を継続できるよう環境を整えます。医師は視診による細かな変化を手がかりに診察を行うことが多いことから、遠隔医療の質を上げる取り組みも進めています。
患者さんや健康な被験者の方々が治験に参加いただくことで、はじめて新薬の開発が可能になります。他の患者さんを助けたいという想いで試験に参加いただく方々の貢献によって、科学の進歩やより良い社会がもたらされています。