監修:静岡厚生病院 小児科 診療部長 田中 敏博 先生
RSウイルス感染症にかかった際の症状


軽症の場合
RSウイルス感染症にかかるとさまざまな症状があらわれ、なかには重症化する赤ちゃんもいます。しかし、ほとんどの場合は軽症で、以下のような症状がみられます1–3。
- 鼻水
- 鼻づまり
- 咳・くしゃみ
- 微熱
- 不機嫌
- 食欲がない
注:これらの症状がすべてではなく、他の症状が生じることがあります。これらの症状のすべてがあらわれるとも限りません。また、他の感染症でも同じような症状が
みられる場合があります。
気になる症状がみられる場合は、主治医にご相談ください。

重症の場合
赤ちゃんの肺は小さく繊細で、生まれた後も免疫機能は発達の途中で
完成はしていないため、RSウイルス感染症が重症化しやすい状態に
あります4 。RSウイルス感染症によって、細気管支炎や肺炎など、
呼吸器系の重篤な状態に陥ることがあり、以下のような症状を
引き起こすことがあります1–3,5。
- 発熱、粘調度の高い大量の鼻水
- 咳
- 喘鳴(ぜんめい。息を吐くときに聞こえる高音域の呼吸音)
- 呼吸が速い、または呼吸が困難
- 呼吸の際、普段よりもお腹が引っ込んだり、息を吸う際に肋骨と肋骨の間がへこんだりする
- 酸素不足により唇や指先が青くなる(チアノーゼ)
注:これらの症状がすべてではなく、他の症状も生じることがあります。
これらのすべての症状があらわれるとも限りません。
また、他の感染症でも同じような症状がみられる場合があります。
気になる症状がみられる場合は、主治医にご相談ください。

喘鳴(ぜんめい)
RSウイルス感染症によって引き起こされる肺炎、
細気管支炎で、喘鳴を確認することがあります2。
RSウイルス感染症の多くは軽症ですが、時に赤ちゃんが苦しいと感じたり喘鳴がひどくなったりすることもあります2。
注:赤ちゃんの呼吸器症状にはさまざまな原因が考えられます。赤ちゃんの呼吸で気になることがある場合は、主治医に
ご相談ください。
RSウイルス感染症の進行と合併症
RSウイルスによる重症呼吸器感染症
RSウイルス感染症にかかっても、ほとんどの場合は、細気管支炎や肺炎のような重い症状を引き起こすことはありません2。しかし、経過を予測することはむずかしく、赤ちゃんが重症化することもあります6。だからこそ、RSウイルスはどんなウイルスなのか、どんな症状を引き起こす可能性があるかを理解しておくことが 大切なのです。

RSウイルスと肺炎
RSウイルスが肺の奥深くに入り込んで炎症を起こすと、肺炎になる赤ちゃんもいます1,3,7。 肺胞という肺のなかの小さな袋に液体や膿がたまり、呼吸が困難になります1,3,7。

RSウイルスと細気管支炎
細気管支炎は、細気管支と呼ばれる肺の最も細い気道の感染によって引き起こされる症状です2。 細気管支が炎症して腫れると、粘液が溜まって、細気管支をふさぎ、呼吸が困難になります1。
赤ちゃんの細気管支炎の約80%はRSウイルスが原因だと言われています2,8。

赤ちゃんと、 RSウイルスのリスク因子
RSウイルスに感染してもほとんどの場合は軽症ですが1、どの赤ちゃんでも細気管支炎や肺炎を起こす可能性があります9。 どのような赤ちゃんが入院することになってしまうのかを予測するのは非常に難しいのですが6、 いくつかのリスク因子がわかっています。

環境
およそ3人に2人の赤ちゃんが、1歳の誕生日より前にRSウイルスに感染すると言われています10。 以下の環境や状態の1つ以上に当てはまる赤ちゃんは、そうではない赤ちゃんよりも、RSウイルスに 感染する可能性が高くなります11。
- 気温が低い
- 湿度が高い
- タバコの煙にさらされている
- 大気中のベンゼン濃度が高い(ガソリンスタンドの近くに住んでいる場合など)
- 都市部での生活
- ストーブによる暖房などの家庭環境

からだの状態
RSウイルス感染症は、かぜのような症状から数日以内に重症化することがあります。
特に、以下のようなお子さんは重症化しやすいとされています12。
- 早産児
- 生後12ヶ月までの乳児
- 慢性肺疾患または先天性心疾患のある2歳未満の乳幼児
- 免疫不全のある乳幼児
- 神経筋障害のある乳幼児

症状が似ている病気
呼吸器感染症
ライノウイルスやヒトメタニューモウイルスによる他の呼吸器感染症や、喘息発作でも、RSウイルス感染症と似たような症状を示すことがあります13。RSウイルス感染症の特徴として、赤ちゃんの細気管支炎や肺炎の主な原因であることを覚えておくことは重要です2。
気になる症状がある場合は、主治医 にご相談ください。

RSウイルス感染症の予防と管理について、詳しくはこちらをご覧ください。
引用文献
1. Meissner HC. N Engl J Med 2016; 374(1): 62–72.
2. Piedimonte G and Perez MK. Pediatr Rev 2014; 35(12): 519–530.
3. Mayo Clinic. Respiratory syncytial virus. Available at: https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/respiratory-syncytial-virus/symtpms-causes/syc-20353098. Accessed: September 2024.
4. Pickles RJ and DeVincenzo JP. J Pathol 2015; 235(2): 266–276.
5. Vandendijck Y et al. Influenza Other Respir Viruses 2022; 16: 1091–1100.
6. Bianchini S et al. Microorganisms 2020; 8(12): 2048.
7. National Heart, Lung and Blood Institute. What is Pneumonia? Available at: https://www.nhlbi.nih.gov/health/pneumonia. Accessed: September 2024.
8. Dalziel SR et al. Lancet 2022; 400: 392–406.
9. Hall CB et al. Pediatrics 2013; 132(2): e341–e348.
10. Walsh E. Clin Chest Med 2017; 38(1): 29–36.
11. Suleiman-Martos N et al. J Pers Med 2021; 11: 416.
12. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Respiratory Syncytial Virus Infection (RSV). Infants & Young Children. Available at: https://www.cdc.gov/rsv/high-risk/infants-young-children.html. Accessed: September 2024.
13. Children's Hospital COlorado. Respiratory Illness in Kids: How to Tell the Difference Between COVID-19, Flu and More. Available at: https://www.childrenscolorado.org/conditions-and-advice/parenting/parenting-articles/coronavirus-and-flu-symptoms. Accessed: September 2024.
MAT-JP-2502391-1.0-06/2025