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赤ちゃんが集中している様子の写真

RSウイルスを理解する

監修:静岡厚生病院 小児科 診療部長 田中 敏博 先生

RSウイルスは気道(空気の通り道)や肺に侵入し、容易に感染を引き起こします1,2
RSウイルス感染症はほとんどは軽症ですみますが、乳幼児の呼吸器感染症の主な原因です2

どうして年長児やおとなと 比べて、 赤ちゃんでは RSウイルス感染症の リスクが高いのですか?

RSウイルスは誰にでも感染する可能性がありますが、なかでも重症化するリスクの高い方がいます3。特に、1歳までは、赤ちゃんの肺と免疫機能はまだ発達の途中段階であるため、RSウイルス感染症にかかりやすく、重症化のリスクも高くなっています4

この動画では、RSウイルス感染症について言葉で伝えることのできない赤ちゃんのために、おもちゃ達が大活躍!

RSウイルス感染症に立ち向かう赤ちゃん"ソフィア"の物語を観てください。

眠っている赤ちゃんの画像

赤ちゃんの免疫機能と RSウイルス感染症の関係は どうなっているの?

赤ちゃんの免疫機能は生まれた後もまだ発達の途中段階です。
そのため、RSウイルス感染症から身を守るために、十分な免疫機能を働かせることが難しいのです5–7

乳児の気道と鉛筆の先端の比較画像。鉛筆の方が太いことを示している

赤ちゃんの肺はどのように発達するの?

赤ちゃんの肺は、乳児期から小児期にかけて発達し続けます8

赤ちゃんの気道(空気の通り道)は非常に小さく繊細9で、鉛筆の先よりも細い部分もあります8

他の感染症と同様に、赤ちゃんがRSウイルス感染症にかかると、この狭い気道が粘液でふさがれる可能性が高くなり、呼吸が困難になります10

免疫機能も発達中のため、赤ちゃんの小さな肺は、RSウイルス感染による症状が重症化しやすい状態になっています8

RSウイルスが肺に与える影響は (11)?

RSウイルスの侵入経路(目、鼻、口)を示す画像

1. RSウイルスは飛沫を通じて、目、鼻、口のなかに侵入します。

Adapted from Jain H et al. 2023.

RSウイルス感染症にかかると、どんな経過をたどるの (12)?

赤ちゃんがRSウイルス感染症にかかると、ウイルスは体内で3~5日ぐらいの間に増殖します(これを潜伏期間と呼びます)12 。その後、症状があらわれ始め、通常、5日目頃に悪化します。そして感染後、7~10日でよくなります12

RSウイルス感染症は多くの場合は軽症で、上記期間に回復することがほとんどです2。しかし赤ちゃん によっては、感染後数日のあいだに、かぜのような症状から重症化することもあります13

感染後に咳が4週間ほど続くことがあり、約半数の赤ちゃんに喘鳴(ぜんめい)が見られます12

病気の進行を示すタイムライン画像。1日目:赤ちゃんが、ウイルスを含む飛沫に接触し感染

Adapted from Eiland L. 2009 and the Centers for Disease Control and Prevention (CDC). 
赤ちゃんの状態で気になることがある場合は、主治医にご相談ください。

注意:これらの情報はRSウイルス感染症による一般的な発病パターンを示したものですが、期間や症状には個人差があります。
 

RSウイルス感染症の症状や重症度については、こちらをご覧ください。

引用文献

1. Chatterjee A et al. Infect Dis Ther 2021; 10: S5–S16.
2. Piedimonte G and Perez MK. Pediatr Rev 2014; 35(12): 519–530.
3. Kaler J et al. Cureus 2023; 15(3): e36342. 
4. Pickles RJ and De Vincenzo JP. J Pathol 2015; 235(2): 266–276.
5. Simon AK et al. Proc Biol Sci 2015; 282(1821): 20143085.
6. Lambert L et al. Front lmmunol 2014; 5: 466.
7. Esposito S et al. Hum Vaccin lmmunother 2016; 12(7): 1700–1706.
8. Di Cicco M et al. Pediatr Pulmonol 2021; 56(1): 240251.
9. Hussain M et al. Biochim Biophys Acta Mel Basis Dis 2017; 1863(12): 3226–3242.
10. Meissner HC. N Engl J Med 2016; 374(1): 62–72.
11. Jain H et al. Respiratory Syncytial Virus Infection in Children. June 2023. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024. Available at: https://
www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK459215/. Accessed: September 2024.
12. Eiland L. J Pediatr Pharmacol Ther 2009; 14(2): 75–85.
13. Smyth RL and Breary SP. Encyclopedia of Respiratory Medicine. Bronchiolitis, Elsevier Ltd. 2006.
14. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). How RSV Spreads. Available at: https://www.cdc.gov/rsv/causes/index.html. Accessed: September 2024.