監修:静岡厚生病院 小児科 診療部長 田中 敏博 先生
RSウイルスは広がりやすく、赤ちゃんの細気管支や肺に重大な影響を引き起こします1,2。
このページでは、RSウイルス感染症の予防や管理をサポートする方法についてご紹介します。
RSウイルスはどのように広がるの?
RSウイルスは口や鼻からの飛沫(ひまつ)によって感染する可能性があります。また、咳やくしゃみ、キスやだっこのような密接な身体的接触を介して感染します3。
RSウイルスに感染すると、かぜのような症状があらわれます2。ほとんどの人は自分が感染していることに気づかず、
簡単に他人にうつしてしまうこともあります2,4。RSウイルスは、おもちゃ、ベビーベッド、食器などの硬い表面で何時間も生存することができます。
赤ちゃんがこれらの表面に触れて、その手で自分の目や鼻、口に触れることで広がっていきます2,3。
RSウイルス感染症はやキッズスペースのような場所で赤ちゃんに感染が広がっていきます。学校など自宅以外の場所でRSウイルスに感染した兄弟や姉妹から、感染することもあります3。

RSウイルスから赤ちゃんを守るには?
かぜをひいているご家族がいたら、家のなかでもマスクをしたり部屋を分けたりするなどして赤ちゃんにうつさないようにしましょう。
他の兄弟・姉妹に咳や鼻水があるときも、赤ちゃんに触ったり、目の前で話しかけたりしないよう気を配りましょう。
ご家族や赤ちゃんのお世話をする人は、せっけんによる手洗い、アルコール消毒などで、手や指をきれいにしましょう。
また、RSウイルス感染症を予防したり発症を抑制したりするために、下記のような予防薬(抗体医薬品)やワクチンがあります。
抗体医薬品
抗体医薬品は、からだの免疫システムを使わずに、からだの外で作られた抗体を注射するお薬です。
RSウイルスの抗体医薬品は、あらかじめお薬を注射してからだのなかで持続させておきます。これにより、RSウイルスにさらされた際に感染を予防したり、発症や重症化を抑えたりすることを期待します。
母子免疫ワクチン(ワクチン)
ワクチンは、病原体を完全になくしたり弱めたりした病原体の⼀部を接種することで、からだに免 疫を付ける⽅法が⼀般的です。
RSウイルスの母子免疫ワクチンは、妊娠中のお母さんにワクチン接種を行い、赤ちゃんがRSウイルスの抗体を持った状態で生まれてくることを期待します。
RSウイルス感染症の管理
RSウイルスの伝染期間
RSウイルスに感染した赤ちゃんは、症状が出る数日前から他人にうつす可能性があります3。
感染力があるのは一般的に3~8日間ですが、赤ちゃんによっては症状が消失した後でも、
最長で4週間も感染力を維持していることもあります3。
RSウイルス感染症の進行段階 (3,5)

Adapted from Eiland L. 2009 and the Centers for Disease Control and Prevention (CDC).
気になる症状がある場合は、医師の診察を受けてください。
注記:これらのRSウイルス感染症の一般的な発症パターンを示していますが、期間や症状には個人差があります。
家庭で症状をやわらげる方法
現在のところ、RSウイルス自体に効く治療薬はありません。
そのためRSウイルス感染症では、基本的にはあらわれた症状をやわらげる対症療法が行われます。
RSウイルス感染症が疑われる場合でも、お子さんの機嫌がよくてつらそうでなければ、あわてずに様子を見守って受診すべきかどうかを判断してもよいでしょう。
症状をやわらげる方法 (6)
- 十分に水分をとる。脱水を防ぐために、十分な水分をとることが重要です。
- 水分を十分にとることができない、呼吸が苦しい、全体的に状態が悪化しているなどの場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
RSウイルス感染症の登園停止期間
RSウイルスに感染しても「〇日休まなければならない」という決まりは、特に定められていません。 ただし、お子さんが通園している場合、RSウイルス感染症後の登園再開の目安は「呼吸器症状が消失 し、全身状態がよいこと」とされています7。
そのほかに独自のルールを定められている場合もありますので、通っている園やお住まいの自治体に確認しましょう。
RSウイルスはものの表面でどのくらい生きているの?
RSウイルスは硬いものや柔らかいものなど、さまざまな物質の表面で生存することができます3 。一般的に、プラスチック製のおもちゃのような硬いものの表面では、衣服のような柔らかいものよりも、ウイルスが長く残っている傾向があります3。一般的に、表面や物体の上で、5〜7時間生存していると言われています8。定期的に石けんで洗い手や指の表面を清潔にしておくなど、よい衛生環境を保つことは、RSウイルスや他のウイルスをの感染を拡げるリスクを減らします16。
RSウイルスは潜伏感染するの?
症状はあらわれていなくても、からだのなかにRSウイルスが一時的にいる場合があります。こうした状態を保菌と言います。保菌している人は他の人に感染させることができます3。
一般的に、健康な成人はリスクの高い人(赤ちゃんや高齢者、免疫が低下した人など)と比べて症状が出にくく、RSウイルスを保菌している場合があるため、注意が必要です8。
引用文献
1. Chatterjee A et al. Infect Dis Ther 2021; 10: S5–S16.
2. Piedimonte G and Perez MK. Pediatr Rev 2014; 35(12): 519–530.
3. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Symptoms of RSV. Available at: https://www.cdc.gov/rsv/symptoms/. Accessed: September 2024.
4. 厚生労働省. RSウイルス感染症Q&A(令和6年5月31日改訂)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/rs_qa.html
(2025年3月アクセス)
5. Eiland LS. J Pediatr Pharmacol Ther 2009; 14(2): 75–85.
6. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). How RSV Spreads. Available at: https://www.cdc.gov/rsv/causes/index.html. Accessed: September 2024.
7. 子ども家庭庁:保育所における感染症対策ガイドライン(2018 年改訂版)(令和5年5月一部改訂)10月一部修正
8. UK Health Security Agency. Respiratory syncytial virus (RSV): symptoms, transmission, prevention, treatment, 2021. Available at: https://www.gov.uk/government/publications/respiratory-syncytial-virus-rsv-symptoms-transmission-prevention-treatment. Accessed: September 2024.