リアルワールドエビデンスが経験を知識に変える

知識の蓄積と適切な行動でヘルスケアを進化

難しい課題を掘り下げるとき、科学者は、問題を特定し、エビデンスを集め、事実を検討し、仮説を検証して知識を蓄え、ソリューションにつながるエビデンスを探します。

近年の研究では、利用できるデータが増えています。データの量が飛躍的に増え、データソースも増えています。「ビッグデータ」と呼ばれる巨大なデータを検討し、価値を引き出すAIや機械学習などの技術が類を見ない勢いで発展しつつあります。

多量のデータが得られても、適切なツールを用いてデータを整理・理解し、正しい質問を問いかけなければ、患者さんに役立つ知識を得ることはできません。

サノフィは新たなツールを活用して、従来の方法では不可能だった検討を行い、ますます増えつつあるリアルデータから知見を得て、患者ケアの向上に役立てています。リアルデータは、臨床試験から得られる従来のデータを補うものになるかもしれません。

サノフィのバイスプレジデントでリアルワールドエビデンス&クリニカルアウトカムのグローバルヘッドのハビエル・ヒメネス(Javier Jimenez)は、次のように述べています。「リアルワールドデータを解析すれば、私たちの製品の実生活における価値、有効性や安全性をよりよく理解することができます。将来的には、個々の患者さんに適したオーダーメイド医療を提供できるようになりたいと考えています」

リアルワールドエビデンスとは、幅広い情報源から得られた医薬品の使用状況や、考えられるメリット/デメリットに関する臨床エビデンスのことで、情報源は医療記録、人々の行動に関するデータ、社会経済的状況や環境条件、病院のデータ、保険請求、ウェアラブルデバイス、ソーシャルメディアなど多岐にわたります。これらの情報は、健康に関する意思決定を改善する可能性があります。情報を総合し、注意深く処理し、データプライバシーに関する各種規制に従って扱えば、医薬品や治療法、患者ケアの改善につながるヒントやタッチポイントが得られる可能性があります。

リアルワールドエビデンスは、治療に関する重要な情報を提供すると同時に、医薬品開発に要する費用や時間を軽減する可能性があります。

従来の臨床試験は、比較的少人数の厳選した患者さんを対象として行うもので、治療法の安全性と有効性を評価するよい方法です。これに対して、リアルワールドで収集したデータには、患者さんが質の高いヘルスケアにアクセスできるかどうかや、社会経済的要因、行動や生活習慣などの情報も含まれ、ここからヒントを得ることができます。

臨床試験では、例えば治療中に体重が増加した患者さんが推奨の用量から下げて元に戻したことを確認することはできませんが、各種の調査や受診のデータを慎重に収集して解析すれば、そのような変化を確認することができます。

「臨床試験で得られる情報にこのような情報を組み合わせれば、患者さんの体調、医療システムと患者さんの行動の相互作用について、より包括的に検討することができます。臨床試験の発表論文で検討される変数は数百種類であるのに対し、リアルワールドエビデンスの検討では、患者さんの行動、社会経済的データ、併存疾患の詳細や治療など、数千種類の変数が含められることがあります。このように、リアルワールドエビデンスの研究は、製品よりも患者さんに重点を置いた試験であるといえます」とヒメネスは述べています。

サノフィは既に機械学習と人工知能(AI)を採用し、DARWINリアルワールドデータプラットフォームで約4億5000万人の患者さんの生活に関する記録の匿名化データを解析しています。サノフィは、リアルワールドエビデンス研究への取り組みを強化しており、2019年11月には、ハーバード大学医学部の教職員が立ち上げたAetion社との提携を発表しました。この提携により、Aetion社のエビデンスプラットフォームとDARWINが統合され、リアルワールドデータの解析が行え、治療法の有効性、安全性や価値に関する透明性が高い、科学的な検証がされた回答が速やかに得られるようになります。

リアルワールドデータと、リアルワールドエビデンスは、短期的なトレンドではありません。これは将来につながる技術であり、サノフィはこれらのエビデンスを患者さんの生活改善に最適な形で役立てつつ、プライバシーとデータのセキュリティを維持するリーダー企業となる態勢を整えています。

サノフィのメディカルエビデンス・ジェネレーションのグローバルヘッドであるベルナール・アムラン博士(Dr. Bernard Hamelin)は、次のように述べています。「医薬品企業のデータ分析の最終的な目標は、患者さんの健康改善にあります。このためにも、私たちは、データ、分析プラットフォームと専門家のエコシステムを作ろうとしています」

「Aetion社が提供するのは、データ解析に対する系統的なアプローチです。Aetion社が提供するアプローチのカギとなる要素はワークフローで、これにより複数のチームが担当しても整合性の高いデータ解析を行えるようになります」とヒメネスは述べています。

米国食品医薬品局(FDA)は長年にわたり、リアルワールドエビデンスを用いた安全性評価を行ってきましたが、このようなデータの使用を拡大し、新たな患者サブルグープの特定、新たな適応症の定義や、臨床試験の設計にも活用するパイロットプログラムを検討しています。

「これは臨床試験の代わりになるものではありませんが、リアルワールドにおける治療の効果を継続的に検討し、得られた情報を用いて患者ケアの向上をもたらすものとして、臨床試験を補強するものとなります。FDAがリアルワールドエビデンスのさらなる活用に向けた扉を開けたという事実は、きわめて重要です」とヒメネスは述べています。このことは、リアルワールドエビデンスが近い将来、新たな適応症や化合物を承認する際に有効性の評価に用いられる可能性があることを示しています。「今後の展開が待たれます」とヒメネスは述べます。

目標は、患者さんからデータを得て解析し、しっかりと整理された形で患者さんに戻るサイクルを作ることだとヒメネスは言います。これにより「患者さんが、自らの健康に関する日々の意思決定を行う力を持つことができます」。

ヒメネスは、「多くの企業が、高度なデータ解析技術のことを、人工知能(AI)ではなく、拡張知能(Augumented Intelligence)と呼んでいます。(数多くのプロセスが自動化され)人間は、真に重要なポイントに集中できる時間を持つことができるようになりました。ヘルスケアの提供についてより良い決定を行い、患者さんの一人一人があらゆる時点で正しい決定が下せるよう最良の情報をお届けするという目標の実現に、拡張知能が貢献しています」と述べています。